iroiroarukedoのブログ

色々あるけど・・・。面白くなかったら、ごめんなさい。

医療とフェティシズム その4

(その4)

不妊治療をしている婦人科のクリニックでは、ご主人に精子をとってもらう採精室という部屋があります。今は男子事務職員がしてくれますが、最近まで採精室のDVDを買いに行くのは私の仕事でした。店に行って色々なジャンルのDVDのパッケージを眺めていると、全身に金粉を塗った熟女とか、ヒロイン物コスプレのニューハーフとか、フェティシズムの奥の深さに驚嘆します。

昔、どこかで、「くすぐりプレイ」で有名なレーベルの監督のインタビューを読んだことがあります。いつも服を着たままの女の子をくすぐるのですが、ある時、ファンにサービスしようと女の子を裸にしてくすぐったら、全国から抗議の手紙が殺到した。
「僕たちは、そんなものを見たいんじゃない」
監督は慌てて、もとの着衣スタイルに戻したそうです。

また、例えば全身タイツと全身ストッキング。門外漢には同じようなものに思えても、マニアにとっては決定的な違いです。ガンダムマジンガーZも私には区別がつきませんが、アニメの展示会でそんな事をいえばブーイングの嵐となる。そんな感じでしょう。

ファンタジーにはわずなか差異も重要で、少しでもズレが生じると、せっかく作り上げた物語が雲散霧消してしまいます。

さて、採精室のDVD。あまりに反社会的な内容は避けますが、それ以外には、できるだけ幅広いジャンルのものを揃えるようにしています。でも、医療ものだけは置いていません。

「神聖な医療をそんな目でみるなんて」などという高邁かつ偏狭な考えからではありません。実際に患者として医療機関にいる時には、医療プレイのパッケージを見ただけで萎えてしまうだろう、と思うからです。

私自身もそうですが、おそらく大抵の医者にとって医療もののAVだけは、考えるだけでゲンナリしてしまうと思います。それは、ファンタジーがファンタジーでなくなってしまうからなのでしょう。(でも、隣接分野の整骨院ものとかは、また別の話です。)

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医療とフェティシズム その3

(その3)

つまり、人間の性欲自体は生物学的現象であるにせよ、それがどこに向かうかは文化的、社会的制約の下にある、と言うことです。

フロイトの有名な症例に「女性の鼻の穴にペニスを入れることを夢想する男」というのがあります。人間の性欲は単純に生殖器に向かうのではなく、生殖を表象する記号を目指しているわけで、何かのきっかけで鼻の穴に欲情しはじめることは、十分にありうることなのです。

私が研修医だった時の話です。モデルをしているという、とても綺麗な方の担当になったのですが、毎日、洗浄を必要とする症例でした。

数ヶ月間、来る日も来る日も内診台で洗浄を繰り返し、やっと状態が良くなってきたので、そろそろ退院をという、ある日のことでした。

内診台を降りた彼女が、
「空気が乾燥していて、昨日の夜に少しだけ鼻血が出たんです」
と言います。

専門外ですし、耳鼻科に対診の依頼を出すことになったのですが、紹介状に「鼻血です」とだけ書くのも芸がないと思い直し、自分でも鼻粘膜の状態くらいは確認することにしました。

「鼻の中を診ておきますね」

そう言ってペンライトで彼女の鼻を照らそうとしたら、

「それはイヤっ」
と激しく顔をそむけられました。

何のことかわからずに呆然としていると、彼女は真っ赤に顔を染めて

「そこは耳鼻科の先生でないと、恥ずかしい・・・・」

その途端、私も自分が耳まで熱くなっていくのを感じました。

禁断の実を食べてしまったイブとアダムがイチジクの葉で、鼻を隠しはじめた瞬間でした。

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医療とフェティシズム その2

(その2)

裸族の男たちはなぜ、裸の女性を目の前にしながら、平然と日常生活を送ることができるのでしょうか。彼らにとって目の前の乳房は、赤ん坊の欲望の対象となりこそすれ、大人の男の欲情の対象になろうとは、夢にも思わないでしょう。医学・生物学的な観点からみると乳房は、生殖器官ではなく授乳器官なのですから、当然のことと言えます。

にもかかわらず現代の日本社会において、どうして月亭可朝は「ボインはお父ちゃんのものやあらへんで〜」と警鐘を鳴らす必要があったのでしょうか。(注1)

フェティシズムといえば、例えば脇毛やハイヒールなど、身体の一部や衣服に執着することで、倒錯した異常性欲と定義されています。

しかし、何をもって「倒錯」と言えるのでしょうか。グラビアアイドルの授乳器官の写真に欲情することと、脆弱部位の保護機能が遺残したと考えられる腋窩(えきか=脇のこと)の体毛に欲情することに、何の違いがあるのでしょうか。

そのように考えると、あらゆる性的対象は、本来、記号であり、視覚刺激はその形自体ではなく、その意味こそが欲望を刺激しているのだとわかります。

つまり、すべての性欲はそもそもフェテッシュであり、倒錯なのです。

注1:『嘆きのボイン月亭可朝 1969年

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医療とフェティシズム その1

(その1)

婦人科医をしています。でも、男の産婦人科医って、いま一つイメージがよくないですね。私も一人で飲みに行くときは高校教師か不動産屋という事にしていますが、医者連中と出掛けるときにはそうもいかず、飲み屋の女の子から「何科ですか?」と聞かれます。

脳外科とかは「格好いい」と言われるのに、私の番になって「産婦人科」というと「絶対、いやー!」。

そんなわけで近頃は、「夜は産婦人科」と答えるようにしています。

女性がそう思うのは仕方ないとしても、同じ男性には心象が理解されているかというと、そうでもありません。「毎日いいな」と揶揄されるか、逆に「嫌にならないか」と心配されることもあります。

幸いなことに、どちらでもありません。診察室のベッドとホテルのベッドは違うのです。

知性的な方は「病気の人を見てもなんとも思わないですよね」と気遣ってくれますが、かといって、それも実際の感覚は少し違います。

現に患者相手に事件を起す医師もたくさんいるわけで、医師が裸の患者を相手にどう感じるのかを、なんと説明すれば納得してもらえるでしょうか。

理解の鍵はフェティシズムにあると思います。「人間は裸ではなく、その記号に欲望する」という事をお示ししていきたいと思いますが、長文になりますので何度かに分けさせて下さい。

また、それあたり、どうしても自らの体験を明らかにしなくてはなりません。極めてプライベートな心裡の奥に秘めたる欲望を語るのはお恥ずかしい限りですが、どうか私の『ヰタ・セクスアリス』にお付き合いいただければと思います。

「どうしてブラジャーをとらなくちゃならないんですか!」と怒られてから、若い女性には服の上から聴診器を当てるようにしているという知人の内科医がいます。中世ヨーロッパで、どうしても若い貴婦人を診察しなければならないときには、本人の代わりに横においた人形を診察したというエピソードを思い出しました。

 もちろん私の病院でも、イヤがられる場合は女性医師に振るようにはしているのですが、外来の担当が変わる場合もあるし、急な処置や手術もありますから、必ず女医が対応できるわけではありません。それは事前にお伝えしているのですが、それでも彼氏やご主人が「女医希望なのに、男の医者が診察した」と怒鳴り込んでこられることもあります。

ただ、これまでお一人だけ「嫁を女医が診察した」と怒鳴り込んでこられた方がありました。私が代わりに診察して納得いただくことができましたが、ある大きな組の組長さんでした。

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